「とーご先輩は、好きな人、いますか?」
わたしのような身分違いの者が訊ねてもよいのかわからなかったけど、とーご先輩は質問を拒否せず、少しはにかんで小さくうなずいてくれた。
「……うん、いる。ちょっと前から」
「えっ、ほんとですか!?」
「うん。かなり鈍感な子で、たぶんまったく気づいてもらえてないと思うんだけど」
とーご先輩の好きな女の子。
想像してみたら、やはりプリンセスしか思い浮かばず、めまいを起こしそうになる。
この人ほどになると、現在進行形で、きっとたくさんの女の子からたくさんの好意を寄せられているはず。
それでも、ほかの誰とも軽率につきあったりしないで、好きな人をまっすぐに想っているところが、すごくとーご先輩らしくて素敵だと思った。
「そんなの、わたし、めちゃくちゃ応援しちゃいます!」
「え?」
「とーご先輩に好きになってもらえた女の子、ぜったい幸せです! ちょーうらやましい!」
こんなに素敵な人に好きだと言われて、わざわざお断りする女の子なんているわけがない。
それでもとーご先輩は、また弱った感じに目じりを下げ、「そうかな」と謙遜した。
「千笑ちゃんってさ、けっこうずるいよね」
「えっ」
とーご先輩の瞳、澄んだブラウンが、じっとわたしを見つめている。
あんまり美しくて、吸いこまれそうに、なってしまう。
「……あのさ、おれ」
「は、はい」



