純情、恋情、にぶんのいち!



ヤス先輩のオススメだというパスタ屋さんは、インテリアのかわいい、おしゃれなお店だった。

さすがといったところ、これは、女の子ウケがとてもよさそう。


「千笑ちゃん、なに食べる?」

「とーご先輩はどうしますか?」

「おれは変化球より定番のほうがいいかな。わりと冒険できないタイプで」

「そうなんですか? じゃあわたしが冒険してみようかな」


とーご先輩は、茄子とモッツァレラのトマトソースパスタ、
わたしは、ホタテと明太子の和風パスタを選んだ。

ふたりともけっこう優柔不断で、メニューを決めるのにかなり時間がかかってしまった。


「おれ、パスタ一杯で足りるかなあ」

「けっこう食べるほうなんですか?」

「うん、こう見えて」


そういえば中学時代は野球部だったと言っていたっけ。

いまは部活はやっていないはずだけど、当時のままの胃袋をしていたら、パスタ一皿ではたしかにちょっと少ないかも。


「バイト先でもまかない超食ってるよ」

「えっ、バイトしてるんですか?」

「うん、家の近くのラーメン屋で」

「ええっ、それはめちゃくちゃ意外な……!」

「ほんと?」


だって、その事実を聞いてもイマイチぴんときていない。

学校の王子様が、脂まみれになって、大きな声を出しながら、せっせとどんぶりを運んでいるなんて、わたしだけじゃなく、たぶん誰も想像すらできないはずだ。


でも、こんな店員さんがいるとなれば、女の子どうしでもうっかりラーメンを食べに行きたくなってしまうだろうな。

そう思ったら改めて惚れ惚れしてしまった。

そして、どうしてこんな人が、わざわざ休日に、わたしなんかとランチしてくれているんだろう、と。