先生と、お父さん。
ふたりのあいだには、わたしなんかでは想像もつかないようなしこりが、もしかしたら存在しているのかもしれない。
「……お父さん、と、仲直りはできたんですか?」
「仲直りもなにも、喧嘩してたわけじゃねえよ」
先生は返事に困っているように眉を下げた。
「むしろ、“あいつ”とあの人はずっと上手くやってる。そもそもアッチの人格は父親向けに作られた人格なんだし」
「……じゃあ、“先生”は、教師には、なりたくなかったですか?」
少し上にある瞳を見つめる。
隣どうしに座っているから、視線がいつもよりうんと近くにある。
「それは“俺”の話をしてるのか」
眼鏡なしのヨウ先生は、眼鏡ありのヨウ先生とは、別の人だ。
「なりたいとも、なりたくないとも、思ってたわけじゃない。あいつには悪いと思ってるよ。俺が抱えきれなかった重圧を全部背負わせちまってるわけだからな。
俺はおまえが思うようなやつじゃない。
――俺は、弱い人間だよ」
だけど、たしかに、同じ人でもあるのだ。
「わたしは、どっちの先生も……そういう特質もひっくるめて全部、澄田陽平という人が好きなんです」
ぽこん、と頭の上に手のひらが乗った。
「もう何回も聞いた」
「だって何回言っても伝わらないから」
「伝わってるよ。俺にも、あいつにも、嫌ってほど」
嫌ってほど、とはなんだ。
嫌じゃ、嫌だ。



