「自分がいまなにをしゃべってるのか、きちんと自覚をしろ」
先生はわたしから体を離し、目を逸らしたまま、大きなため息をついて、そう言った。
あきれているのかもしれない。
面倒だと思ったかも。
「……自覚は、してます」
「してねえだろうが」
デコピンをくらわされる。けっこう痛くてびっくりする。
「俺がなにをしたとしても、おまえに責める権利はなくなるんだぞ」
好きになったのはわたしのほう。好きだと言ったのもわたし。今夜ここに来たのも、いっしょに寝たいと言い出したのも、全部わたしだ。
「そんなこと、わかってます」
「アルコール入ってる男に、あんまり無防備になるな」
「勝手に飲んだのは先生のほうだよ」
これにはさすがの先生も反論の術を失ったのか、それ以上はなにも言わなかった。
「……風呂、沸いてるから、入ってこい」
「っ、いいんですか!」
「よくないっつっても聞かないやつがなに言ってんだ」
お風呂は、もちろんどきどきもしたけど、それを遥かに超える温かさでわたしを包みこんでくれて、ほっとした。
脱衣所には、バスタオルにくわえ、男物のトレーナーとジョグパンツが用意されていた。
先生の服だ。おとなのにおいがする。
「さっさと髪乾かして、ベッド行ってろ。ガキはもう寝る時間だよ」
入れ違いでお風呂に入ろうとする先生に、バスルームの前で言われたその言葉に、うなずく以外の返事をする余裕なんてなかった。



