先生が勧めるのでわたしもいっしょにピザを食べた。
おいしいものには不思議な力が宿っている。
さっきまで沈みかけていた気持ちが、食べているうちに少しだけ回復したような気になる。
「おまえ、食ってるときがいちばん幸せそうだな」
「だっておいしいもん~!」
「あんまりいっきに食うとケーキ入らなくなるぞ」
「え! ケーキ?」
飲みかけの缶ビールが頬に押しつけられる。
突然のひやりとした感覚に驚いていると、先生が笑った。
先生はきょうも、優しくて、いじわるで、大人な、いつも通りの先生だ。
おかしなことを考える必要なんかない。
いま目の前にいる先生が、いまのわたしのすべて。
「ケーキあるんですかっ」
「ガキが喜ぶと思ってついでに買ってきた」
「ガキじゃなくても喜びますケドー!」
「食いたければ勝手に食えば」
冷蔵庫のなかに入れておいたというそれを持ってくる。
プラスチックのツリーと、砂糖菓子のサンタで飾られたまんまるのケーキは、ザ・クリスマスという装いで、心躍る。
「かわいいー! 食べちゃうのもったいないなあ」
「このまま食うのかよ」
「えっ、切り分けますか?」
「どっちでもいいけど、どうせ俺はほとんど食わないし」
「ええっ。いっしょにメリークリスマスしたいです!」
先生は少し笑って、自分のすぐ隣をぽんと叩いた。
「こっちに来い」
もうじゅうぶん近くに座っているところを、ずりずりとお尻を動かし、ぎりぎりまで左に移動する。
「……せんせい」
そして、こす、と腕にオデコをくっつけた。



