とりあえずリビングに戻り、ソファに座って心を落ち着かせてみた。
先生が入れてくれたわたし専用の甘いコーヒーはもう冷めていて、口に含むと、さっきまで火照っていた体が嘘みたいに冷えていくのがわかった。
「ただいま」
うしろから声をかけられてびくりと肩が跳ねる。
思考に没頭していたせいで、先生の帰ってくる音にぜんぜん気づかなかった。
「あっ……! お、おかえりなさいっ」
「ちゃんとイイコにしてたか?」
「えっ!? シテマシタヨ!?」
まったくしていなくて、めちゃくちゃ家じゅう探検していたけど、言ってもいいことがなさそうだから黙っておこう。
先生がソファに腰かけ、買ってきたらしいピザと缶ビールをテーブルに並べていく。
その手元ばかりを見つめていると、いきなり顔を覗きこまれて、飛び上がってしまった。
「そんなにものめずらしいか」
先生の手が缶ビールのプルタブを引っぱる。
プシュ、と小気味いい音。
「先生も……お酒、飲むんですね」
「大人の特権だからな。生徒の前で飲酒したこと、おまえ、絶対誰にも言うなよ」
冗談みたいに言いつつ、堂々と缶のふちに口をつける先生は圧倒的に大人で、憧れてしまうような、勝手に寂しくなってしまうような、複雑な気持ちがした。



