先生を好きでよかった、と思わず不躾なことを思う。
だって、そうじゃなかったらきっと、いまごろわたしはこの笑顔に身分違いの片想いをして、そのうち身を粉々に砕いていたはずだから。
深々と頭を下げると、ろくにお礼も言えずに、急いで駅に向かった。
その途中で電話をかけた。
ほかでもない、電話帳を開いて選んだ相手は、世界でいちばん大好きだと思わされてしまう人。
「……はい、もしもし?」
「もっ、もしもしっ!」
「どうしたんです。なにかありましたか? また変態にでも追われているのですか」
学祭からの帰り道、一度だけかけたことがある電話。
そのとき先生がわたしの番号を登録してくれたのかどうか、わからないけど、名乗らずともわかってくれたから、もしかしたらそうしてくれているのかもしれない。
恋をしていると、とても臆病になったりするし、とても図太くなったりもする。
「先生の……先生の、おうちは、どこですか?」
「は、」
「いまから行ってもいいですか?」
「……なにを馬鹿なことを。いいわけがないでしょう」
「でも、だって、ぜったい、今夜は先生と過ごしたいんです」
困らせているのは重々承知のこと。
でも、困ってほしいと思っているのも、本当だった。
お願い、サンタさん。今年のクリスマスはなんにもいらないから、
……どうか、先生と。



