上の空だと、ずっと自覚はしている。
「千笑ちゃん、体調悪い?」
「えっ……」
「ずっとぼうっとしてるから。寒いなか待たせちゃったし、風邪引いちゃったかな」
とーご先輩は優しいのに、わたしは最低だ。
イルミネーションだってきれいなのに。
こんなにも、奇跡みたいに、素敵な夜なのに。
「悪化したら大変だよね。きょうはもう帰ろっか」
「で、でも……」
「泰人と藤沢さんはきっと上手くやってるはずだから、気にしなくてもたぶん大丈夫だと思うよ」
「そうじゃなくて、とーご先輩は……」
365日のうち、かなり特別なイベントのクリスマスイブ、人気者のとーご先輩には、きっとたくさんのお誘いがあったに違いない。
それを、せっかくこうして空けてくれて、こんな後輩とこうしてわざわざイルミネーションを見に出かけてくれて……。
それなのに、こんなに簡単に、「帰ろう」なんて。
「おれのことならほんとに気にしなくていいよ。もともと誘ったのは泰人なんだし」
「で、でも……」
「じゃ、こうしよう」
このまばゆい笑顔の前では、どんな最新の電飾だろうと敵わないはずだ、と思った。
「また今度、次はおれが千笑ちゃんを誘うから、そのときにきょうの埋め合わせしてもらえれば!」
――王子・上杉冬吾は誰にでも優しいから、悲しいかな、勘違いする女子が頻発してしまうらしい。
何度か耳にしたあれは、噂なんかじゃなく、真実だ。



