「さっきの男もそう。あんな手に騙されちゃダメだろ」
なんだか、こんなことを思うのはおこがましいにも程があるし、滅相もないのだけど、
でも、なんだか、お兄ちゃんみたいだ、と思った。
おかしなナンパから助けてくれたのも、カフェオレをご馳走してくれたのも、退屈しないようにいろんな話をしてくれるのも、こうして叱ってくれるのも。
全部お兄ちゃんみたいで、上にきょうだいのいないわたしにとっては、本当に新鮮な感じがする。
「とーご先輩って……」
「うん?」
「――たいっへんお待たせしました~!」
まるで店員さんのような台詞だったけど、この甘ったるい声の持ち主を、わたしはひとりしか知らないのである。
「泰人、これはふつうに遅刻だかんな」
「だってさあ、おれとしてもふたりきりの時間が欲しいワケじゃん?」
お砂糖ですら辛く思えそうな笑顔を浮かべた、その隣には、クリスマスには見合わないほど不機嫌なさーちゃんが。
「さーちゃん! メリークリスマス!」
「はいはいメリークリスマス」
死んだような目でそんなふうに言われても、きっとキリストさんも喜ばないだろう。
ささっとヤス先輩の隣を離れ、こっちにやって来たさーちゃんに、わたしととーご先輩はいつかと同じように苦笑を浮かべるほかなかった。



