「えっ」
「いや、あのとき千笑ちゃんがおれのハチマキを拾ってくれてなかったら、こうして話すこともなかったんだよなあ、と思って」
ふたりとも同じようなことを考えていて、思わずいっしょに笑ってしまった。
ヤス先輩とさーちゃんを待っているあいだ、とーご先輩はいろんな話をしてくれた。
好きなものとか、嫌いなもの。中学時代の部活のこと。
なんと、意外なことに野球部に所属していたらしい。
ボウズ頭にするのがどうしても嫌で、高校では続けなかったんだって。
それから、本人のいない隙に、ヤス先輩の話もたくさんしてくれた。
物心ついたときからずっと一緒にいるから出会いの記憶すらないんだ、とくすぐったそうに教えてくれたとーご先輩は、ヤス先輩をすごく大切にしているのだと思った。
「ああ見えてほんとはすごいいいやつで。女の子にだらしないのが玉にキズだけど、幼稚園のころからあんなだった気がするし、もうしょうがないのかも」
「ええっ、幼稚園のころから? それはもう天性のものですね……」
「泰人に泣かされた女の子なんて数えきれないんじゃない? それでもあいつの周りに絶えずたくさん人がいるのは、根がほんとにいいやつだからだと思う」
ヤス先輩の話をするとーご先輩は本当に楽しそうで、聞いているこっちまで楽しくなってしまう。
そういえば、とーご先輩の話をするヤス先輩も、似たような表情を浮かべていた気がする。
「でも千笑ちゃん、いくら泰人がいいやつだからって、ほいほいついていくのはダメだからね」
「えっ」
いきなり真剣にそんなことを言われたら、笑って聞き流せない。



