静かに一歩ずつ、それでも着実に近づいていく。
椅子に座る先生の前に立ち、見下ろしながら、そっと、ふるえるくちびるを寄せた。
それは本当に、
軽い、軽い、くちづけ。
「……先生、わたしのこと、好きですか?」
先生はわたしからのキスを拒まなかった。
たぶん、受け入れてくれた。
慣れないことをしたせいで体が震えていて、声まで振動を帯びてしまう。
眼鏡をかけた先生は、イエスともノーとも言わないで、ただ、その答えを瞳に映しだすみたいにわたしを見上げながら、ゆっくりとくちびるを動かし始めたのだった。
「――クリスマス、」
わたしにとっては突拍子もない5文字だった。
「上杉くんや佐藤くんの前で、あまり羽目を外しすぎないように」
「…………っ!」
ダンジテチガイマスネ、
とどうせ言われてしまうだろうから、やきもちですか、とはもう聞かないでおこう。
「いいですね」
「っ、はい! わかりました、先生!」
「きみはいつも返事ばかり調子がいいんですからね」
先生、じゃあ、質問があるんですけど、
先生の前では、羽目を外してもいいですか?
聖なる夜、静かな夜空を見上げたら、きっと先生の声が聞きたくなると思うんですけど、
電話したら、出てくれますか?



