アホの子よろしく呆けたわたしを置き去りにして、先生が椅子に腰かける。
そして、依然として眼鏡は外さないままで、にっこりといつもの優しい笑みを浮かべたのだった。
「さて、では僕も“ご褒美”を貰いましょうか」
「えっ……」
「先生のおかげで92点も取れたんだ、とさっき野村さんが言ったんですよ」
戸惑うばかりのわたしに、先生はおかしそうに小さく笑い、嘘ですよ、とすぐに前言撤回した。
「今回の点数は全部きみの頑張りの結果です」
「で、でも……」
「そうじゃありません」
ごうごう燃えるストーブのおかげで、暖かいのなんかすっかり通り越して、いまはなんだかとても暑い。
「たまには僕のほうでもいいじゃないですか」
なにを言われているのかイマイチわからず、ぽかんとしてしまう。
先生が呆れたような顔で机に肘をついた。
「きみは“彼”のほうが好きなんですか?」
テン・テン・テン、と頭にハテナが浮かんでいく。
数十秒かけてようやっと合点がいったとき、顔から火が出ているのかと錯覚した。
だって、いまのって……もしや。
「せん、そ、それ、それって……まさかや、やきもち、」
「断じて違いますね」
ずっと遠くから憧れていた綺麗な顔が、無防備に目を伏せている。
長いまつげに嫉妬している余裕なんてないほど、わたしの心臓はドクドク暴れていた。



