「先生は、わたしのこと、好きですか」
あいまいに、そして、いじわるに、ゆっくり上がっていく口角は、きょうもその答えを言ってはくれなかった。
やっぱり、ずるいのは、絶対的に先生のほうだ。
「わかりやすく膨れてんじゃねえよ」
むにーと頬をつままれた。
それからおもちゃみたいに左右に引っぱられる。
「……先生」
「なんだ」
「どうして……キス、してくれないんですか」
「さんざんしてやっただろう」
「そうじゃなくてっ……」
この人は本当に、どれだけ人のことをからかい倒せば満足するの。
「くち……、に」
言った瞬間、にやり、と笑う。
「……っせんせい」
「自分で言っといてなに恥ずかしがってんだよ」
「だって……」
こんなに恥ずかしいことを言わされているのに、なにもしようとしてくれないどころか、答えてさえくれないのは、さっきの仕返しかもしれない。
それでもなおなにもせず、ただ見つめてくる先生に、そろそろ本当に爆発してしまう予感がした。
その、3秒前。
先生の親指がわたしの下くちびるを触ったから、それは一瞬にして鎮火したのだった。



