踵を返しかけていたのを踏みとどまり、もういちどカンちゃんのほうへ体を向ける。
見やると、ひとりの体育委員の男子生徒が、せっせと棒引きの棒を運んでいるところだった。
「うわ、すんません! 大丈夫ですか!?」
「カンちゃん! ちょっと、大丈夫!?」
棒をカンちゃんの頭にヒットさせた彼と、わたしとで、バタンキューしている顔に呼びかけても応答ナシ。
やばい。
ホントに失神しちゃった!
「――こりゃ脳震盪起こしてるわね。あまり揺らさないようにして、保健室まで運んでくれる?」
「ユ……ユミ先生!」
超ミニスカートのナイスバディな彼女は、これでもウチの保健医だ。
ボディラインもそうだけど、なにかにつけてとにかくセクシーなので、いつも男子生徒から羨望のまなざしを向けられている。
そういえば、あのヤス先輩と関係をもっているとか、もっていないとか、そんな不純な噂も聞いたことがある。
「ほら、チィちゃん。あなた保健委員でしょ」
「うへえ……」
こう見えて、わたしは実は保健委員なので、ユミ先生とはそれなりに親しいし、名前も知られているのである。
これはまた、面倒なことになってしまった。



