「へえ」
わたしを抱えたまま、先生はたいして興味なさそうにつぶやいた。
「それで……ヤス先輩、わたしととーご先輩もいっしょにどうかな、って言ってくれてて」
言葉を止めて、ちらりと顔色をうかがってみる。
ぜんぜん、なんでもなさそうにしている。
「こっ、断る予定だったんですけど!」
わたし、なにを言いたくて、先生になにを言ってほしくて、こんなことしゃべっているんだろう。
「なんで断る必要があるんだよ」
「え……」
欲しかった言葉の対極にあるような返事に、それ以上しゃべり続ける元気なんか、まるっと奪われてしまった。
「行けばいいだろ。せっかくなんだから」
なにが『せっかく』だというの。
もしわたしがその言葉を使うとしたら、
せっかくのクリスマス、わたしは、先生といっしょに過ごしたかったです。
たとえそれが、ただの口止め料だとしてもかまわないから。
わたしが黙っているので、先生もそれ以上はなにも言わない。
かわりに彼の右手が、そっとわたしの左耳のあたりに伸びてきて、髪を耳にかけた。
背中がぞわりとする。
「それとも、『ほかの男と一緒に過ごすな』とでも言ってほしかったのか?」
かあ、とたちまち顔が熱くなった。
これじゃイエスと言っているようなものだ。
図星ど真ん中を突かれて、うろたえていると、先生がクックと笑った。
そっと抱き寄せられる。
そして、耳の裏あたりに、――ちゅ、と。



