「……眼鏡をかけたヨウ先生が、たぶん憧れに近いような意味で、好きでした。
なんとしても一日に一度は学校のなかで見かけたくて、それが叶った日は、どんなに最低なことがあったとしても最高にハッピーで」
顔を上げて聞いてほしい。
ちゃんと、わたしを見てほしい。
「はじめて、もうひとりの先生……彼、に遭遇したときは、ほんとに怖くて、憧れてたはずのヨウ先生に対しても怯えちゃうくらいでした」
『 ――バラしたら、おまえを犯す 』
いまだに彼のほうの声でしっかりと脳内再生できる。
史上最低最悪の、秘密の知り方だったと思う。
「……でも、」
先生が瞳だけを少し上げた。
眼鏡ありのヨウ先生と、眼鏡なしのヨウ先生、ふたりがいっしょに並んでいるように見えて、まぼろしみたい。
「彼のほうがいたから、ヨウ先生への気持ちが、憧れから恋に変わりました」
自分なりに、これまでにないほど大切に言った。
でも、意外なほどしっくりこなくて、気持ちを伝える難しさというのを実感する。
「あれ? こう言うと“彼”のほうが好きみたいに聞こえちゃいますね。ぜんぜんダメだあ……」
もういちど、ちゃんと整理して、ちゃんと伝え直そう。
そう思ってぶつぶつ独り言をしゃべっていたら、ふ、と、自分のじゃない息遣いが聞こえた。



