室内に足を踏み入れるなり、やわいオレンジ色が目を刺した。
窓から差し込む夕日に見とれてしまう。
毎日見ている景色のはずなのに、なんだかきょうは、少しだけ違っているような気がする。
コポコポ、心地よい音をたてながら、インスタントコーヒーはいつも通りふたり分が入った。
鼓動の音が脳みそまで届いてくるみたいだ。
ばくばく暴れているというより、繊細な楽器に細い弦が精いっぱい張っているような、静かな緊張感があった。
「飲みますか」
「あ、はいっ。……えっと、ありがとう、ございます……」
ミルクは入れず、3つの角砂糖のみで甘ったるくしてくれた、先生特製の、わたし専用のコーヒー。
冷まさないで、熱いまま口に含むと、涙腺がじゅんっと濡れる感じがした。
どうにも消せない苦味のせいなのか、舌を襲った熱さのせいなのか、それとも別の理由なのか、判断がつかない。
いつもと変わらない放課後。
ただひとつだけ違うのは、先生が、いつもより遠くに立っているということだ。
もどかしいこの距離が嫌で、だけど、わたしにはそれを縮める術もなくて、じれったさを誤魔化すために熱湯に近いコーヒーを飲み干した。
喉の奥がじんじんする。
体の芯が火照っている。
空のマグカップをどうすることもできず、先生をじっと見上げていると、先生は窓の外へ視線を移していった。



