先生の顔は見ることができなかった。
怒っていても、呆れていても、困っていても、どれでも、嫌だったから。
少しの沈黙のあと、いきなり、ふわりと両頬が温もりに包まれた。
先生の大きな手が、そうしていた。
「いい加減にしろ」
「っ……」
「わがままばっかり言ってんじゃねえぞ、このバカが」
こつん、優しくぶつかったのは、オデコとオデコ。
至近距離で息を吐いた先生は、心の底から困った顔をしていて、それを見たらぎゅうっと胸が苦しくなってしまう。
「俺が毎日送ってやるわけにもいかないだろう」
「……でも、」
「またなにかあったらどうするつもりだ」
また、怒られた。
センセイに怒られて泣くなんて、小学生みたいで、かっこわるくて、本当に嫌。
けれど、次の瞬間には先生の胸に抱き寄せられていて、泣いている場合なんかじゃなくなった。
「言っただろう。おまえだって可愛い生徒のひとりなんだ、って」
「……はい」
カワイイ、セイトの、ヒトリ。
たくさんいるその生徒のうち、わたしは先生にとって、何番目の位置にいますか。
少しでも、特別なところにいますか。



