純情、恋情、にぶんのいち!



ひとりで悶々と考えながらとぼとぼ歩いていると、公園の横に停めてあった先生の車が目に入った。


「……先生、迷惑かけちゃってごめんなさい」


いきなりなんだ、と言っているような、でもそれを口にするのも億劫そうな目が、こちらを向く。


「ありがとうございました。おやすみなさい!」


逃げるように踵を返した。

気まずさとか、恥ずかしさとか、いろいろな気持ちが体の真ん中でゴチャゴチャしていて、とてもいたたまれなかった。

けれど先生は、簡単にわたしの腕を掴むと、バカかと、いつもより低いトーンで言った。


「ひとりで帰るつもりか? またあいつに襲われたらどうすんだ」

「で、でも、だって……」

「いいから乗れ。送るから」


なかば無理やり、助手席に押しこまれるようなかたち。

すぐに先生も運転席に乗りこみ、黙ったままエンジンをかける。


憧れのヨウ先生の助手席。

まぎれもなく夢みたいなシチュエーションなわけだけど、いまはそんなことに浸っている場合ではない。


「……先生」

「なんだ」

「怒ってますか……?」

「当たり前だろうが」


前を向いたまま、ハンドルをきりながらそう言った横顔は、本当に腹を立てていそうだ。


「忠告も聞かずにひとりで帰って、案の定襲われてるんだからな。おまえは世界一のバカだ」

「ご、ごめんなさ……」

「バカなのは知ってたからもう謝らなくていい。次は? 右折か? 左折か?」

「あっ、右折、です……」


完全に呆れられている。

もうそれ以上、よけいなことをしゃべるのもいかがなものかと思い、おとなしくナビだけを続けた。

沈黙が、ひたすら重たい。