「タケル」 名前を呼ぶ。 桃色の中、その顔があたしを捉える。 お互い一瞬、時が止まった中にいた。 でもやがて、お互いの欠片に気付き、ゆっくりと笑顔を作る。 あたしの右耳と、タケルの左耳。 桃色の中、雪の様な銀色のそれが優しく光る。 「香」 階段の上で、タケルがあたしの名前を呼んだ。 あの日、違う方向に進んだつま先が、あたしの方に向かって階段を降りてくる。 あたしも真っ直ぐに、その愛しい笑顔に向かって足を踏み出した。