ある雪の降る夕方。




『少し早いけど、最後のホワイトデー。ありがとう。俺、香のことほんとに好きだった』



・・・・・・好きだった。

好きだったよタケル。


ほんとにほんとに、大好きだった。


何よりもその気持ちが、大切だったはずだった。
迷ってしまった時、すれ違ってしまった時、一番にその気持ちを思い出さなきゃいけなかった。


一番にそれを、伝えなきゃいけなかった。


あたしはとても大事なものを扱うように、その小さなピアスを両手に包んだ。

溢れ出る涙は、タケルが好きだと叫んでいる。

戻れないところまで来てしまった。
もうどうしようもないと諦めていた。


・・・・・・でも、まだどこかに、この小さなピアスの欠片くらいでも、進める道があるのなら。



外では雪が降り続いていた。

それはやがて地面につもり、溶けて、水になり、地上に緑を宿す。

小さな緑が地面に広がり、青空に向かって桃色の欠片達が広がる季節がやってくる。