タケルはあたしの様に戸惑ったりせずに、ゆっくりと答えた。
「うん。知ってた」
「な、んで」
「あの日、マスが告った日、マスの口から聞いたから」
あの日。今とは正反対の、寒くて凍えそうな冬の日。
公園で、タケルの腕を感じた瞬間が鮮明に蘇った。
あの日、タケルはもう知っていたんだ。
「マスは、黙ってそんな事するような奴じゃないから」
あたしは黙ったまま俯く。
知ってる。増岡君は、そんな人じゃない。
黙っていたのは、あたしの方。
嫌な沈黙が流れる。手のひらに汗を感じた。
口を開こうとしても、何を言うべきかわからない。
黙っていてごめん。すぐに断らなくてごめん。
でもどれも、何か違う気がする。



