ある雪の降る夕方。


その声は、何の前触れもなく、あたし達の間に響いた。
振り返ったあたしの視線をとらえたのは、増岡君と同じように、日に焼けた姿。

張り付いたのどの奥から、ゆっくりとかすれた声が出る。


「・・・・・・タケル」


その時のタケルの表情は、今でも鮮明に覚えている。
怒っているわけでも、戸惑っているわけでもない。
ただまっすぐに、あたしを見るその表情。

曇りのないその視線が、あたしは怖かった。


やがてゆっくりと視線を落としたタケルは、
そのまま背を見せて歩きだした。
あたしは何も言えていない。
その背中を見ながら、どうしようもない焦燥感に襲われた。

もう二度と、タケルが振り返ってくれない気がして。