お昼少し前に、両親が食材の買い物に出かけた。
見に行くなら、今しかない。こっそり、私も出かけようと決心した。


自分の目で、見たかった。
あの猫がそのままあそこで死んでいるのだとしたら。


物心がつかないうちに祖父母を失った私は、誰かの死に際に接するのは初めてだった。
死、とは何なのか。自分で向き合いたい。


コートを羽織ってから、マークに、でかけてくるね、と言った。
マークは日向でうとうとしていた。


家の前の道路を渡る。田舎道だからみんなが車を飛ばす。しかし片側にしか歩道がなく、隣の家の先から急カーブになっていて、歩行者としては怖い。


中学時代に毎日歩いていたが、絶対に事故に遭いたくない、としつこい程に左右を確認して道路を横断していた。


なんでみんなそんなに飛ばすんだろう。通学路なんだから、もっと優しく走ってくれればいい。


3分もせずに現場に着く。猫はいなかった。