「でも、朝起きたら一緒にホットチョコでもいかがですか?」
「夜明けのコーヒーじゃなくて?」
「夜明けのホットチョコレート。“初めて”の恋人と」
初めてをこんなにもくれるなんて思ってもみなかった。隣に座ったあの時は思いもしなかったエンドロール。こんなロマンス小説のネタにもなりやしないだろうこの三流のラブストーリーは、演者のあたしたちにはとびきりの極上である。
「…拓夢となら、いいよ」
「瑠李さん、それ以上言うと正午のホットチョコレートになるよ」
「…語呂、わるいわね」
ホットチョコレートを飲んで、明日は有給でも使おうか。
そしたら、今度は二人であそこのバーでマスターでも翔くんのでもいい。とびきりおいしいカクテルを飲みましょう。
甘くて苦いモーツァルトチョコレートリキュールを使って、ウォッカのきいたチョコティーニを。
end

