「なんにも…用意してないよ」
そんな苦し紛れの照れ隠しはひとつ言ってみるけれどご機嫌な小鳥さんには通用しないらしい。
「瑠李さんだけで、十分甘いし、初めて貰えて幸せだからいいよ」
「…ばか」
甘くて、どろどろに溶かされてしまうようなこの雰囲気は好きなものじゃなかった筈なのに。不思議ね、拓夢となら、いいかもしれないだなんて思ってしまう。
拓夢の胸に頭をこすり付けるかのように、すり寄った。それに対し、甘い笑い声をもらしてぎゅっと抱きしめてくれる、そんな年下のオトコノコ。
ありえない、筈だったのにね。こんなにもこの腕の中は心地よい。

