「オフィスラブの邪魔はするつもりはないんですが、木戸さん、時間なので」
突然、あたしたち以外誰もいないはずの資料室に声が響く。ちょうど死角であたしには見えないけれど、ドアのところに誰かいるようだった。
「須藤さん!申し訳ない、今向かうところです。…瑠李、ちょっとお預けな」
そうセクシャルな笑みを漏らした後に浩介がしゃきっとした顔でドアへと向かうのに、あたしも俯きながら続く。
これから、協賛の会社と企画の進行についての会議だったのに。何をしていたの、あたしは。
――…それに耳まで毒に侵されたとでもいうの、瑠李。
あの声が拓夢の声に聞こえるなんて。

