ベンチを探して歩いてた。
だけど空いてるベンチは無くて。
「………。」
携帯を開いたり閉じたりしながら忙しなく歩く。
そんな時間は辛かった。
――俺、桜華の迷惑になってるんじゃないかな。
考えれば考えるほどそんなことしか浮かばない。
足元にあった空き缶を蹴ってみれば、カラカラとむなしい高音が響いた。
「ダメじゃない、ゴミは捨てなきゃ。」
説教口調の声。
女の人だろうけど、それにしては低めの声だな、と思った。
「まぁ、道端に空き缶捨てる人が1番いけないんだけど、っと。」
カラン、と空き缶をごみ箱に投げたその人に、俺はやっと視点を合わせた。



