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――…







「月華!おかえり。」

「………。」

「禍后、月華はソレ嫌いなんだぞ。」

「いいじゃねぇか。一仕事終えてやっと帰ってきたんだから、なぁ?」

「………。」

「ほら見ろ、迷惑そうな顔してるじゃないか。」






――これは、私の記憶だ。


――間違いなく、私の。


――まだ幼いころの私。乃亞と禍后と私だけが本拠地であるここで生活していたころのことだ。




幼い私は真っ赤な絨毯に足をつけていない。



――昔は体に何かが触れるのが嫌で、いつも風の壁を作っていたから。




「月華、メシ食うか?」

「いらない。」

「禍后のメシは旨いんだがな。」



顔を歪めた私は、すうーっとドアをくぐっていった。