華の眼前にいる男は、にっこりと笑っていた。華にはオワリが何なのかわからない。

ただ、その笑顔さえあれば何でも構わないと思った。








「…貴方とともに居られるのなら、なんでもするわ。」

「全てがオワレば、僕らはどんなものよりも幸せになれるよ。」

「これ以上…?」

「やっと、僕らの望みが叶う。」






2人きりで長い時間を過ごした2人の、残る望みはただ一つ。それを叶えるために、動き出したのだ。



男がするりと華の頬を撫ぜる。それだけで、華はえも言われぬ感情をおぼえた。

ゾクリと背に走ったそれは、決して恐怖などではない。












「さぁ、始めようか。」






2人は、小さな窓から飛び立った。


城には、飛べない黒の声がチクリと響いた。