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ひらりと舞い戻った華の眼下には、懐かしい光景が広がっていた。

MOONの本拠地、限られた登録者しか知らないが全ての登録者が知っているその場所。誰もが知っているが誰も寄り付けない、2人だけの小さな小さな城。

拭いきれない死の匂いを体全体で感じながらその門前に降り立った。


「おかえり、華…」

「おかえりなさい、マスター」


2人は、その冷たい身体を抱きしめあった。だきしめあっているうちに、じわりじわりと相手の身体の熱を感じた。


片時も離れたくないというように、2人は抱きしめあったままその小さな城に入っていった。

人の気配も、熱も、音も、何もない場所。生活感などは全く感じられず、そこにはただ空気があるだけだった。















その場所で、2人は長い時間を過ごした。