その蓮士の言葉は、この一週間で何度も聞いたものだった。

あの、桜華を去った日に蓮士は学校も去るつもりだった。

それを引き留めていたのは他でもない嘉だ。


嘉は、蓮士がいなくなることに大きな不安を抱いていた。

これまで、絶対的な存在として傍らにいた支えがいなくなる、それはあまりにも嘉にとって辛いことだった。


だけれども、これほどまでに真っすぐ前を見つめている蓮士たちをこれ以上引き留めることは出来なかった。

この数日の間に、蓮士と結都は固く心を決めたらしい。

楓は未だに復讐心のほうが大きいようだが、その根底には侑希に会いたいという気持ちがあるのだろうと嘉は思っていた。


何より、自分や李玖のように何も背負うものが無い楓は、蓮士の傍から離れたくないのだろう。そしてそれを、行動に移すことができる。


嘉は少しだけうらやましいとも思った。




「じゃあな、嘉、李玖。元気でやれよ。」


また会おう、とは言わなかった。

これから3人が進むのは修羅の道だからだ。

また会える保障なんてないし、会わないほうが良いのかもしれない。

それでも笑顔で、蓮士と結都、楓は手を振って去っていった。




「…李玖、何も言わなくて良かったの?」

「……っ、」

「寂しいね…。あいつら、なんであんなに強いんだろ…」




声を上げずに泣く李玖と、涙を流さずに心で泣く嘉。二人はその場でうずくまって長い時間を過ごした。