「…なあ、結都。」

「…ん。」



小さく小さく、呟くように蓮士は言った。



「俺たちは、生きていていいのか?」






兄に殺されるはずだった。

女の子に殺されてしまいたかった。


…だが、自分は生きている。記憶を消されたとはいえ、のうのうと。




「…どうだろう。」




生きていていいのか。

生きていくことが、できるのか。

もう、死んでしまった方が楽な気もする。


何も、考えたくはなかった。




………だが、死ねない。



「…華っ……」





理由もなく、あの少女に心を奪われたままだからだ。


彼女が生きている限り、先に死んでしまうことなどできない。



___天使のような皮をかぶった、冷徹な悪魔。



そう表現するのがふさわしいであろう彼女に、なぜ、こんなにも焦がれてしまうのか。二人には全く分からなかった。





「…なんで……」




なぜ、こんなことになってしまったのだろう。


幼いころの自分は、何も知らずにただ楽しかったのに。


…自分の知らない身近で、他の人間が心を病むほどに悩み、考え、心を殺して壊れたというのか。


どんなに頭を抱えても、心が望んでいるのはただ一つだった。





「「……華に、会いたい。」」




絶望を一身に背負い込み、他の誰かと生涯を共にするであろう彼女に、もう一度だけ会いたくてしょうがなかった。