俺には、幼い頃の記憶がない。


おばさんの家に連れていかれたときのことは覚えているのに、それ以前のことが全く分からない。



俺を家に置いてくれていた、おばさん。



じゃあ俺の母親は?父親は?


………何も、知らない…







「悪い、楓。起こしただろ。」

「うん、だけど…蓮大丈夫?」

「ああ。悪い夢でも見てたみてえだ。」






そうやって無理に笑ってみせた俺を、柚が冷めた目で見ていたなんてしらなかった。