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ある日突然。兄が帰ってきた。
たぶん、出て行ってから1年くらいだろう。
もうすぐ俺たちの誕生日だと楽しみにしていたから、その帰宅が本当に嬉しかった。
一度帰ってきて外へ出ていたらしく、俺が帰ってきた後に兄は帰宅した。
「にいちゃん!帰ってきてたのか!」
「ああ、久しぶりだな。」
兄の雰囲気は子供のそれではなかった。
作り物のように綺麗に笑うその顔は、今までは見たこともないものだった。
「もーすぐ誕生日だな!にいちゃんが帰って来てくれてよかった!」
「…ありがとう。ちゃんと、お祝いしなきゃな。」
抱きつくとくしゃくしゃと頭を撫でてくれて、その体温の低さに一瞬戸惑う。
でも、やっぱり。久しぶりに会った兄はやっぱり優しくて、大好きだと思った。
「ということですので、何か、祝い事をしませんか?親戚も集まれるだけ集めて、少しは大々的に。」
そんな、兄の提案。
難しい話はわからなかったが、散り散りになっている親戚を全員集めて、琉川家の再興を願おうというものだったらしい。



