二人が働き始めてからも朝食の時間は変わらず、父が出かけ、続いて母が出かけていく。
二人が働き始めて間もなく、俺は日中、託児所に預けられることになった。
近所の、優しそうなおばさんが格安で子供たちの面倒を見ている、おばあちゃんの家に遊びに来たような感覚になるおおきな一軒家だ。
柔らかな表情で、目尻には笑い皺が常にできている優しいそのおばさんのことを俺はすぐに好きになった。
「レンくんは絵本が好きなのね。」
おばさんの家には数え切れないくらいのたくさんの本があって、毎日違う本を飽きもせずに読み続けた。
庭で遊ぶのももちろん大好きだったが、絵本が何よりも好きだった。
「これね、おうちにもある!」
「あら、そうなの。おばちゃんと一緒ね~。」
「この絵本ね、父さんが買ってきてくれた!」
「優しいお父さんね~。レンくんはお父さんが大好きなのね。」
「母さんも父さんも、だいすきだよ!」
「そう、素敵ねぇ~」
「でもね、にいちゃんのことももっともっと大好き!」
「レンくんにはお兄ちゃんがいるの?今度連れてきてね。」
「うん!つれてくる!」
兄が帰ってきたら、きっと一緒に絵本を読もう。
この間は母さんはもう読まないのよ、と言っていたが、優しいあの兄ならきっと自分に読み聞かせてくれる。
――そんなことを思いながら、日々を過ごして行った。



