俺たち家族の生活は、祖父の代までに残されたもう残り僅かな遺産を金銭に替え、その貯金を切り崩しながらのものではあったが、少しずつ充実し始めていた。
「そろそろ、働かなくちゃね…」
ある日。母が呟いた。
父はそれに反対もせず、神妙な顔で頷いていた。
「元々もう無くなってた遺産よ。私たちが稼ぐ以外に生きる方法はないわ。」
「そうだな。…蓮士の、小学校についても考えなきゃならないしな。」
父親に、くしゃくしゃと頭を撫でられ、俺は少し安心する。
その日から両親はパートを探し、数週間後には二人とも働き始めた。



