華〜ハナ〜Ⅲ【完結】





俺たち家族の生活は、祖父の代までに残されたもう残り僅かな遺産を金銭に替え、その貯金を切り崩しながらのものではあったが、少しずつ充実し始めていた。




「そろそろ、働かなくちゃね…」




ある日。母が呟いた。




父はそれに反対もせず、神妙な顔で頷いていた。




「元々もう無くなってた遺産よ。私たちが稼ぐ以外に生きる方法はないわ。」


「そうだな。…蓮士の、小学校についても考えなきゃならないしな。」





父親に、くしゃくしゃと頭を撫でられ、俺は少し安心する。



その日から両親はパートを探し、数週間後には二人とも働き始めた。