兄が家を出て行って1ヶ月ほど経った頃。
その頃には家の雰囲気は全くもって変わっていた。
毎朝窓は開けられ、母は朝食をだいたい同じ時間に作るようになった。
そして日中は一緒に散歩をし、お昼寝をして夕食を食べる。
夜には父が買ってきた絵本を読みながら寝かしつけてもらい、就寝。
天気のいい日には散歩に出かけた。
「俺ね、お散歩大好き!」
両側にいる両親と手をつなぎながら、住宅街から離れた河川敷までやってくる。
もうすぐ冬になろうかという秋の終わりの空気は少し肌寒いものではあったが、俺は充実感でいっぱいだった。
そしてある時には、父が初めて行う日曜大工を手伝ったりもした。
「結構難しいもんだなあ…。」
「お父さん!がんばれ!!」
「ああ!蓮士、そこのドライバーとってくれるか?」
「これ?」
「その、細長い棒がついてるやつだよ。」
「はい!」
「ありがとう。」
父親の大きな手で頭を撫でられるのが、大好きだった。



