蓮士side 昔の、ことだろうと思う。 心の底から誰かを尊敬していた。 その人がいなければ自分はどうしたらいいのか分からない程度には。 そしてまた、心の底から誰かを好きだと思っていた。 それは淡い色をしていて、暑くても寒くても、春に咲くピンク色の桜のような色をしていた。 彼女の笑顔こそが幸せで。 彼女の涙こそがこの世で最も不要なものだった。 いつ、どうして、それらの感情を忘れてしまったのだろう。