この家でしばらく過ごしていると、華がだんだんと笑うようになってきた。
話しかけてくれることも、最初はほとんどなかったのに、増えてきた。
「結都、お外に行く?」
「行く!!」
柔らかくほほ笑む姿を見ると、俺が思い出しそうな姿とは離れていく感じがする。
脳裏にちらつく人はきっと、こんな風には笑わない。
「わあ~~!すごいすごい!!!」
華は家から出てはいけない。
それは、あの母親が激怒する様子から学んだ。
でも、二人は外で遊ぶのが好きだ。
だから、華が外に出ようとするときは不思議な力を使った。
「風さん、きもちいね!」
「うん。」
――風が、窓から二人を連れ出している。
初めて見たときは戸惑った。
だが、華には人にはない力があることが分かった。
風の声が聞こえて、風を使役することができるなんて、不思議すぎる。