場面は、夜になる。 「わたしは、もう長くありません。」 「…ああ、…っ、」 「結都を、どうかお願いします…。」 「悪い、本当に…っ、」 俺は眠っていると思っているんだろう。 本当は、リビングのドアの向こうにいた。 夜中に、喉が乾いて起きたのだが、一緒に眠ったはずの二人が隣にいなくて心細くなったのだ。 リビングに来てみれば、いつも笑顔の父親が泣いていた。 母親はいつも通りの穏やかな笑顔。 ただならぬ雰囲気に、俺は入ることができなかった。