華〜ハナ〜Ⅲ【完結】





激怒したらしい母親は、上野を呼びつけて男の子を押しやった。




「早く連れて行って!見たくもないわ!!」




その言葉とともに、男の子は上野の手によって少女の部屋へと連れてこられた。


すぐに上野は出て行き、必然的に二人きりになる。



暫く見つめ合った後、男の子が口を開いた。





「……だれ?」


「貴方は誰なの。先に名乗るべきでしょう。」


「…僕は、結都。ゆうとだよ。」


「…わたしは、華。」




ただ、それだけの言葉を交わした。


それから、部屋は静寂に包まれる。




部屋の外からはぎゃあぎゃあを甲高い声が聞こえた。


母親が叫んでいるのだろう。


何を言っているのかは、子供には分からなかった。