激怒したらしい母親は、上野を呼びつけて男の子を押しやった。
「早く連れて行って!見たくもないわ!!」
その言葉とともに、男の子は上野の手によって少女の部屋へと連れてこられた。
すぐに上野は出て行き、必然的に二人きりになる。
暫く見つめ合った後、男の子が口を開いた。
「……だれ?」
「貴方は誰なの。先に名乗るべきでしょう。」
「…僕は、結都。ゆうとだよ。」
「…わたしは、華。」
ただ、それだけの言葉を交わした。
それから、部屋は静寂に包まれる。
部屋の外からはぎゃあぎゃあを甲高い声が聞こえた。
母親が叫んでいるのだろう。
何を言っているのかは、子供には分からなかった。



