少女の世界を色づけた彼は、暫くもしないうちに再び姿を消した。


2人の間だけに、約束を残していった。


少女はその約束を待ち、日々を生きることにした。




母親の暴力、暴言をさらりと受け流し、学習にも取り組んだ。



美しい言葉遣いや、所作。


“教科”の勉強はもちろん、そんなこともどんどん身につけた。






―――痛いなら、痛みを感じなければいい。


―――悲しいなら、その感情が無くなればいい。


―――辛いなら、耐えなければいい。







少女は瞬く間に変わっていった。



常におびえるようだった視線は段々と冷ややかなものへ。


涙ぐみがちだった瞳は、表情をなくした。




弱い鈴のようだった声は、凛とした芯のあるものへ変わっていった。