風がやんだことに、彼は困惑しているようだった。


先ほど風の話はしたが、理解はしてくれなかった。



再び、風のことを話し出す。





「風さんが、すこし怒ってたみたいなの。ごめんなさい。」


「風さんって…」


「風さんは、わたしを守ってくれるの。」



本当なんだよ、ということを伝えるため、彼の目を見て真剣に話す少女。


それでもやはり、彼は困惑しているようだった。



だけど、風はいつも――



「“人間は華を傷つけるから関わっちゃだめだよ”」

「え?」

「いつも、そう言ってる。たしかに、お母様も上野さんもわたしのことを叩くから、そうなんだと思う。でも、あなたはあの人達とは違う。…そうでしょう?」





真剣に話す少女のことを、彼も目をそらさず見ている。そして、真剣に聞いている。
















―――きっと。彼ならわたしが何を言いたいのか、分かってくれる。


―――誰にも、言えなかった。


―――だけど、ずっとずっと、思っていた。