ビュオオオオオオオオオーーー
「きゃあああああああ!」
立っていられないほどの強風が部屋の中に流れ込んでくる。
風に煽られ平衡感覚をなくした上野は、机に頭をぶつけて意識を失った。
するとすぐに風が弱まり、サラサラと肌を撫でるような柔らかいものに変わる。
「…わたしを、呼んだのは、あなた?」
少女は何か姿が見えているかのように話し始めた。
その部屋には少女と意識がない上野しかいないのに、だ。
だが少女は話を続けた。
「待ってた?わたしを?」
「風、さん…。」
「わたしを、守ってくれるの?」
守ると言った風の意志は、少女だけに伝わった。
それはまた、少女に初めてかけられた言葉だった。
「わたしが怖い思いをしないように、守ってくれるのね?」
ざっくりと短く切られた髪をふわふわと靡かせながら、少女は心底安心したような笑みを浮かべていた。



