「まあ、今はジローが担当なんだからジローが思った通りに指導したらいいよ」という声にタイムスリップしていた意識が現実に引き戻された。

「いきなりまる投げすんじゃねぇ!」


「だって赤ちゃんで体中が埋めつくされて、脳みそまで回らないって感じなんだもん。ていうかね。ジローがちゃんと教師しててちょっと安心しちゃった。だから、よろしくね、彼女のこと」


香織の幸せそうな微笑み。


やっぱり修司を選んだ香織は正解だ。


「……幸せだろ、お前」


「修司だからね。ジローとは正反対の熱血漢の永井修司だからね。死ぬほど幸せってこういう事だって思うの」


「のろけてんじゃねェよ」


「……だって聞くから」


カランと柔らかいベルの音と同時に木製のドアが開いて修司が『ヨッ』と右手を軽く上げた。