~とある教師と優等生の恋物語~

「……なにしに来たんだよ。大学は?」


驚く程速くなってしまった鼓動を静めるように、静かに深く息を吐く。


「今日の講義は三時で終わり」


「で……いつからいんだよ、ここに」


「5時すぎぐらいからかな」


「バカか、お前。ガムやるからはよ帰れ。風邪ひくぞ」


朝から止むことを知らない風を伴った冷たい雨に、寒そうに薄手のカーディガンの前を合わせる白川。

ポケットから出したガムを差し出すと、「ガムなんていらないし。はい、これ」と代わりに俺の手のひらに乗せられたのは一万円札だった。


一瞬だけ触れた彼女の指先は想像よりも冷たい。


「……いらねぇよ、いまさら」


手の上の一万円札が洋書の時のモノである事はすぐに理解出来た。