~とある教師と優等生の恋物語~

「うん。それでいいんだよ。…アンナはそんなに器用じゃないって知ってるし……。

何より最初にキミを傷つけたのは僕なんだから」


「だから急にあたしに『優等生じゃなくてもいいんだよ』とか言ったの?」


「そう……。けどいまさらだよね。僕の声はキミに届かなくて。

洋子に相談したら『自業自得です』って怒られたよ。

『あなたと私は彼女の傷を癒す義務がある』とも」


「お母さんが?」


「お母さんはいつもアンナを心配してたから」


「嘘よ。お母さんはサチにはいろいろ言うけどあたしには言わないもの。気にしてないんでしょ」


「それはねお前は本当にちゃんと出来ちゃうから。

……それに、『あたし、本当にちゃんとやってるから、お母さんそんなに何度も聞かなくてもいいよ。あたしは大丈夫』っていつもアンナが言うから。

……なかなか言えないんだって。

でも……心配はしてるんだよ。口にはださなくても」


“お前は本当にちゃんと出来ちゃうから”と言う白川さんが少しだけ嬉しそうにはにかんでいたのが印象的だった。


「……あたし、それって気を遣わないでいいよっていう意味で言った――」


「そうやって、お母さんはアンナに気を遣って、アンナもお母さんに気を遣って……君たちはすれ違ってきたんだと思うんだ。

いつのまにかアンナが作り上げた壁の厚さに……驚いて……反省した。

アンナが作り上げた壁の厚さはきっと僕が傷つけた傷の深さだ」


少しずつ、絡まった糸がほどけていくのが分かる。