~とある教師と優等生の恋物語~

キッチンのすみで無造作に丸められていた黒いネクタイを指にかけると、彼女はそれをコーヒー片手に人差し指で弄ぶ。


俺の背中を這い回った細く白い指が、オレンジが、黒とのコントラストで妙になまめかしい。


この部屋に女がいるって事がちょっと非日常だった。


「二年程前にね。夕べじゃない」



なるべく簡潔に答える。長居されたら困るから。



「そっか。三回忌?」



「そう」



二年ぶりにたずねた実家は何も変わっていなかった。



ただ母だけが居なかった。