あの2人がお互いの気持ちに気付くのには、もうそう時間は掛からない。




もっともっとぶち壊してやりたかったのに。





あの2人を見ていたら本気でそうすることがためらわれたのはなぜだろう?





2人の間の空気を

2人の強い絆を




自分の過去に重ねて見てしまうからだろうか?



あの時の、僕と果穂の絆はどれくらいのものだったのかな?

あそこまで、自分より相手を大切に思えていたのだろうか?




下り電車のホームから、上り電車のホームに移動しながら溜息混じりにそんなことを考える。




そう言えば…


僕が相澤さんを抱きしめてたってことが大石君の耳に入ったら、彼はどう出るんだろう?

相澤さんは彼に、どう答えるんだろう?





どうせ最終結果は変わらないなら、悔しいから、ちょっとはもめればいい。




…いや?逆に火が付くのかな?

そんなことを考えながら、少しだけ頬の緩む自分がいた。






「それにしてもあの2人、同じようなこと言うなよな…あー腹が立つ!」





誰もいないベンチに腰掛けてそう呟いた。







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